次の時代をつくる『複雑な繁栄の方程式』

 この数年、私たちは、激動する世界を目の当たりにしている。確実に、世界は新たな時代に移行し始め、米国や中国、EUあるいは一部のグローバルサウスも含めて次の繁栄のための体制づくりにかかっている。その実現のための「テクノロジー」は、単なるIoTや半導体人工知能(Artificial Intelligence)といった個々の分野をさすのではなく、重要・新興テクノロジー(CET: Critical and Emerging Technologies)として、デジタルや半導体、AI、量子情報科学(QIS: Quantum Information Science)などの情報技術から、グリーンエネルギー、そして宇宙、創薬・医療など19の分野におよぶ新たな時代の繁栄を約束するテクノロジーの一群をさしている。

 米国バイデン大統領は、2021年の就任後のスピーチで、これらのテクノロジーをもつ企業や国が確実に繁栄を手にするとし、このCET導入の戦略作りを進めている。このCET導入のスピードとテクノロジー群によって新たな時代の経済・産業・社会・安全保障での繁栄が決まる。つまり、CETによる戦略が地政学の核となる時代に入ったのだ。しかし、CET導入は、米国でさえ自国だけでカバーしきれることが難しく、AIのルール・規制一つとっても、日米あるいはEUそして、英国でどうするのか、まだ決まっていないのである。ゆえにEUや日本、韓国など同盟国との連携で進める方向で動いている。

 私たちはシュムペーターやドラッカーから『繁栄の方程式』の中で、イノベーションがいかに重要かを学んできた。ただ、次の時代に向かうための方程式には、別な要因が必要になる。それは、イノベーションがもたらした新たな知識やテクノロジー群を多くの企業や国家にどう広めるかという「拡散(diffusion)」、そしてこれらを使いこなす「汎人材」をいかに作るかという大きな課題がある。さらに、この拡散や汎人材づくり(教育)の連携も必要になろう。

 いずれにしても私たちは、次の時代をつくる『複雑な繫栄の方程式』をより深く理解する必要がある。さらに、ここで問題をより複雑にしているのは、西側民主主義とは異なる体制をもつ中国の存在である。彼らは異なる方程式で動いていることも認識すべきことである。CET自体の複雑さと世界の地政学的な複雑さの中で、日米あるいは日欧州(EU+英・スイス)が連携し、規制・ルールを含めた民主主義の『繁栄の方程式』をつくる時が来ている。

<日本が心すべきこと>

 デジタルにおいて、日本が欧米、あるいは中国、韓国に出遅れた理由の一つは「オールジャパン」の体制づくりに固執しすぎたことである。「オールジャパン」の言葉は素晴らしい響きをもつが、残念ながらCET導入においては機能しない。これまで同様のオールジャパン体制に固執し続け、CET導入においても出遅れるという愚を繰り返してはならない。この10年ちかく日米の大学連携をグラスルーツでつないできた理由はそこにある。                

2024年4月

武田アンド・アソシエイツ

代表 武田 修三郎

                      


<武田アンド・アソシエイツの設立理念>
武田アンド・アソシエイツは、21世紀の育人と研心を考える場とし2005年に発足しました。この考え方の背景には、代表武田が長年親炙した

故平岩外四経団連名誉会長(日本産学フォーラム創立者)からの “日本を20世紀に繁栄した小さな島国で終わらせないために将来を見据えた人づくりを考えるように”との示唆があります。産官学の垣根を超えて日本の発展に貢献する広い視野と見識をともに育むための場づくりを目指しています。
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